勝手に売却された土地の買主になることを防ぐためには

自分の土地が、知らないところで勝手に他人に売却されてしまい、所有権を移転する不動産登記がなされてしまうというのは、考えるだけで恐ろしいことです。また、偽物の売主によって勝手に売却された土地を購入してしまい、売却代金を支払ってしまうというのも、恐ろしいことです。

そのようなことに巻き込まれないように、土地が所有者の知らないうちに勝手に売却されてしまうのはどのようなパターンがあるのかを検討してみます。

他人の土地の売買契約自体は有効

そもそも他人の物について売買する契約自体は、他人物売買と言い、民法上有効な契約です。他人の物を売っておいて、実際に物や権利を移転できなかった場合、売主はその責任を負うというだけのことです。ですから、他人の土地であろうと、買主を見つけ売買契約をしてから、土地の所有者と交渉して自分が土地を購入し、それを買主に引き渡しても良いということになります。

この場合、売主が実際に土地を入手して買主に引き渡したり、買主へ所有権を移転する不動産登記ができなければ、契約を解除されるでしょうし、買主が他人の物であることを知らずに取引したのであれば、買主は売主に損害賠償請求ができます。

買主が、売主の物では無いと知って取引したのなら、土地が手に入らない可能性を理解していたでしょうから、損害賠償まではできません。このように、他人の土地を勝手に売却して、それから土地の所有者と交渉して土地を手に入れ、買主に引き渡すことは可能です。

この場合、土地の所有者は、土地を譲る気がないのであれば、売却や土地の引き渡しを拒めばよいだけです。

所有者になりすまして売ってしまうパターン

土地が所有者の意思によらず勝手に売却されるケースには、詐欺師等が所有者になりすまして、土地を勝手に売ってしまうパターンが考えられます。詐欺師等が、あたかも土地の所有者であるかのように振る舞い、他人の土地について売買契約を締結し、売買代金を受け取り、そのまま逃走する、いわゆる地面師の手口です。

地面師というのは古い言葉で、バブル崩壊後は、ほとんど耳にすることは無くなりました。しかし、2017年に大手ハウスメーカーから63億円を騙し取った地面師グループが、翌2018年に次々と逮捕され、世間の注目を集めました。参考元>土地査定 > 不動産売却一括査定.com

チャンスさえあれば、地面師詐欺で儲けようと考える人は、現在も沢山存在します。

代理権が無いのに代理人を名乗って売ってしまうパターン

土地が所有者の意思によらず勝手に売却されるパターンとしては、代理権がないのに、委任状などを偽造して土地所有者の代理人を名乗り、他人の土地を勝手に売ってしまうパターンが考えられます。このやり方は、買主が相手に代理権があると思い込む必要がありますので、身内が行うことが多いパターンです。

夫が妻の代理人を名乗ったり、息子が父の代理人を名乗ったりすることで、買主が本人に売却の意思があるものと誤解してしまうのです。また、法人であれば、役員の一人が、会社に無断で会社所有の土地を売ってしまうということも考えられます。

買主としては、売買契約はしたものの、契約自体が一種の無効になってしまうリスクが有ります。

本人に能力が無いのに親族等が本人を売主として売ってしまうパターン

認知症の高齢者などの不動産を、親族などが勝手に売却してしまうパターンです。勝手にといっても、本人の関与が必要になりますが、本人にそうした判断能力が無いのを良いことに、適当な説明をして契約書などにサインさせてしまう、という方法です。

買主としては、売買契約はしたものの、契約自体が無効になってしまうリスクが有ります。本来は、精神上の障害により事理弁識能力を欠く状態(日常的なことが分からなくなっているような状態)であれば、家庭裁判所に成年後見人をつけてもらい、成年後見人が裁判所の許可を得て、売主として売却手続をする必要があります。

土地を売るときに必要な書類

このように、土地が所有者の意思によらず勝手に売却される場合には、いくつかのパターンが考えられますが、実際に所有権の移転登記がされてしまうかどうかが、最大の問題です。法務局で土地の所有権移転登記をするときに必要な売主側の書類としては、売主が所有権を取得する登記をした際の権利証(もしくは登記識別情報)と、売主の印鑑証明書が必要になります。

これがなければ、法務局で売買を原因とする所有権移転登記ができません。また、売主は、登記申請書(もしくは司法書士への委任状)に実印を押す必要があります。つまり、「権利証(もしくは登記識別情報)」「印鑑証明書」「実印」が揃わないと、土地所有者の知らないところで勝手に土地の所有権移転登記をすることはできません。

地面師などが権利証や登記識別情報を手に入れるのは相当難しいことですから、それなりに安心しても大丈夫でしょう。対策としては、権利証や登記識別情報の管理をしっかりして、泥棒対策をしておくことです。印鑑証明書は、市町村役場で発行してもらうものですから、これも地面師に騙し取られるということは少なそうです。

実印についても、管理をしっかりしておけば、地面師に取られることは少ないでしょう。しかし、身内が勝手に売ってしまうパターンの場合、この3つは容易に手に入れられることが多いので注意が必要です。身内であれば、実印や権利証等の保管場所は知っていることが多いでしょう。

印鑑カードを持って市町村役場にいけば、本人でなくとも、印鑑証明書を入手できます。印鑑カードが無くても、妻や息子に「保険の手続きで必要」「自動車の手続で必要」などと嘘をつかれたら、信用して、自分で印鑑証明書を取り、身内に渡してしまう人は多いでしょう。

司法書士が間に入ると買主側にとって防衛策になる

一般的に土地の売買代金の支払いは、不動産登記と引き換えに行われます。具体的には、買主は、売主から不動産登記に必要な書類の引き渡しを受けると同時に、売主に売買代金を支払います。日本の不動産取引の慣習では、この同時履行を確実にするため、不動産売買の現場には司法書士が立ち会うことがほとんどです。

司法書士は、売買の当事者ではない中立の第三者として、売主と買主の双方から所有権移転の不動産登記に必要な書類を預かり、登記ができる書類が揃っていることを確認したら、買主から売主に代金が支払われます。特に、買主が銀行から融資を受けて土地を購入する場合などは、金融機関は、司法書士の確認が取れるまでは融資を実行しません。

日本の不動産売買の多くは、このような形で行われています。この際、司法書士は、身内が代理人となっている場合などは、必ず本人から意思確認を行います。また、売主が高齢者の場合は、認知症の疑いが無いかを面談して確認します。

これにより、親族が勝手に売却しているというパターンの多くは防げます。買主としては、売主から「司法書士費用が無駄だから双方で共同して直接法務局に申請しましょう。

僕が書類作りますよ」などと言われても、不動産登記は司法書士に依頼したほうが良いでしょう。司法書士は、登記のために必要な書類についても、偽造ではないかを確認します。司法書士は、毎日、これらの書類を確認しているので、粗雑な偽造であれば、違和感を感じ見抜けるでしょう。

これにより、地面師等の被害もかなりの部分は防げそうです。しかし、印鑑証明書などが精密に偽造されている場合は、司法書士側も最低限のチェックは行うものの、見抜けるケースは少ないかもしれません。司法書士を入れても、万全とまでは言えなそうですので、買主としては、土地取引は、慎重に売主の素性を確認しながら行う必要があります。